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心筋梗塞を未然に防ぐために、狭心症のある方および、たとえ無症状でも動脈硬化の危険因子をお持ちの方は心臓冠動脈のCTを

[2025.07.09]

心臓の健康を守る新しいアプローチ:無症状でも安心しない, MDCT検査

今回は、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の診断と、最近の進歩についてお話ししたいと思います。

虚血性心疾患とは?

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙は心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患を引き起こす危険因子として知られ、動脈硬化を静かに進行させ冠動脈壁の中にコレステロールが溜まってプラークと呼ばれるコブができて内腔は狭くなり、破裂して血栓を形成したりすることで、完全に閉塞すると、前触れなく突然心筋梗塞を発症し急性心臓死につながることも少なくありません。内腔が75%以上狭くなると心筋に供給する血液が運動時に足りなくなって前胸部痛、顎、肩、左腕などが痛くなる、労作性狭心症があります。狭窄が軽くても時に血管が痙攣(攣縮と言います)して内腔が狭くなって胸痛が出現する血管攣縮性狭心症もよく見られます。これまでは、胸の痛みがあるかどうか、運動した時に息苦しくないか、などの自覚症状が診断の大きな手がかりでした。その上で、心電図や運動負荷試験、心臓の筋肉への血流を調べるシンチグラフィーなどの検査を行い、最終的にカテーテルを使った精密検査で冠動脈の狭窄の有無を確認していました。

CT検査の進歩が診断を変えた!

しかし、ここ20年ほどで、CT検査が飛躍的に進歩しました。特に、MDCT(多列検出器CT)と呼ばれる新しいCT装置により、私たちは患者さんの負担を減らしながら、心臓の血管をより詳しく、鮮明に観察できるようになりました。

このMDCTを使うと、比較的大きな冠動脈の狭窄の程度を、体にメスを入れることなく、放射線の被爆量も少なくして調べることができます。これにより、カテーテル検査の前に、より多くの情報に基づいた適切な次のステップを判断できるようになりました。

「無症候性心筋虚血」とは?

ここで皆さんにぜひ知っておいていただきたいのが、「無症候性心筋虚血(むしょうこうせいしんきんきょけつ)」という考え方です。

これは、冠動脈に狭窄があっても、胸の痛みなどの症状を全く感じない状態を指します。特に、糖尿病をお持ちの方やご高齢の方では、症状が出にくい傾向があります。

「症状がないから大丈夫」と思いがちですが、症状がなくても心臓に負担がかかっている状態は、将来的に心筋梗塞を引き起こすリスクがあるのです。

症状がなくてもMDCT検査をおすすめする理由

近年、私たちは、狭心症の症状がなくても、動脈硬化の危険因子が複数重なっている方、特に糖尿病をお持ちの方には、積極的にMDCTによる冠動脈の検査をおすすめしています。

これは、症状がないうちからMDCTで冠動脈を撮影することで、将来心筋梗塞につながるような「狭窄」を早期に発見できる可能性があるからです。もしMDCTで有意な狭窄が見つかれば、症状が出る前に適切な治療を行うことで、心筋梗塞の発症を予防したり、その後の処置にスムーズにつなげたりすることができます。

 

これまでの診断の流れ

MDCT検査を活用した診断の流れ

症状

胸の痛みなど自覚症状が中心

自覚症状がなくても検査を検討

検査

心電図、運動負荷試験、心筋シンチ、カテーテル検査

MDCT検査で早期に血管の状態を評価、必要に応じてカテーテル検査へ

メリット

症状が出てからの診断・治療

無症状のうちに早期発見・予防的治療が可能

あなたの心臓を守るために

心臓の病気は、早期に発見し、適切な治療を行うことが非常に重要です。もしあなたが、

  • 糖尿病と診断されている
  • 高血圧脂質異常症などの生活習慣病がある
  • 喫煙の習慣がある
  • ご家族に心臓病の方がいる

といった動脈硬化の危険因子をお持ちで、特に症状がなくてもご自身の心臓の状態が気になるようでしたら、ぜひ一度、当院にご相談ください。MDCT検査をうけることを考えていただきたいと思います。冠動脈CTが必要と判断された方には信頼できる近隣の連携医療機関をご紹介し、冠動脈CT検査を受けていただきます。

検査結果によって必要に応じて高次病院でさらなるカテーテル検査、治療を行っていただくこともあります。心筋梗塞発症予防のためにコレステロールを低下させるだけでなく、プラークの被膜を破れにくくするスタチンという薬剤、また血管内での血栓予防の目的で血小板凝集抑制薬アスピリンなどを中心に服用していただきます。さらに生活習慣の見直しのサポートを行います。
冠動脈CTは「検査して終わり」ではなく、その後のフォローアップが非常に重要です。継続的な管理まで一貫して対応いたします。

 

ご自身の心臓の健康に関心を持ち、積極的に予防に取り組むことが、健康長寿への第一歩です。何かご不明な点がございましたら、お気軽にお尋ねください。

 

 

 

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