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帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低減の関連性

[2025.05.14]

帯状疱疹ワクチンが、つらい帯状疱疹と後遺症の予防だけでなく、将来の大きな社会問題であるアルツハイマー病のリスクまで下げてくれるかもしれないという、心強い研究結果が出てきました。

帯状疱疹は、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、体の神経に潜んでいて、免疫力が落ちた時に再び暴れ出す病気です。皮膚に痛みを伴う赤いブツブツができ、治った後も神経痛が残ることがあります。この神経痛がまた厄介で、夜も眠れないほどの痛みが続くこともあり、気分が落ち込んでしまう方も少なくありません。残念ながら、この痛みに効果的な治療法は確立されていません。

そんな中、2024年に入ってから、帯状疱疹ワクチンを接種することで認知症になるリスクが下がるという報告が相次いでいるのです。

私が若い頃お世話になった、東京都老人総合研究所(現在の東京都健康長寿医療センター)の松下先生は、アルツハイマー病は抗ウイルス薬と帯状疱疹ワクチンで予防できるという本を出版されました。先生は大変優秀な方で、私がまだ若手だった頃、心臓の教科書の輪読会で、うまく説明できなかった私の上司に代わって、にこやかに分かりやすく解説してくださったことを今でも覚えています。その先生がおっしゃるなら間違いないと思い、私もすぐに帯状疱疹のワクチンであるシングリックスを接種しました。接種後、少し倦怠感がありましたが、2回目は鎮痛剤を飲んだこともあり、ほとんど辛くありませんでした。

世界的に有名な心臓病専門医であるエリック・トポル先生も、ご自身のX(旧Twitter)で、周りの方が帯状疱疹ワクチンの副反応で苦しんだ経験から接種をためらっていたものの、実際に接種してみたら軽い副反応で済んだと投稿されています。

日本はすでに高齢化が進んでおり、認知症の方の増加は、介護する家族だけでなく、社会全体にとっても大きな負担となります。認知症の治療薬は高価な割に効果が期待できないのが現状です。もし帯状疱疹ワクチンで認知症のリスクを減らせるのであれば、国を挙げて推奨すべきではないかと私は考えます。

以下に、ニューヨークタイムズの記事とエリック・トポル先生のXの投稿から、帯状疱疹ワクチンと認知症リスクに関する重要なポイントをまとめました。

「帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低減の関連性」要約(ニューヨークタイムス2024.4.2)

大規模な研究で、帯状疱疹ワクチン接種により、その後7年間の認知症発症リスクが20%低下しました。
オックスフォード大学のポール・ハリソン教授は、この結果を「現時点で認知症の進行を遅らせる効果的な手段がほとんどない中で、20%のリスク低減は公衆衛生上非常に重要」と評価しています。
ウェールズでのワクチン接種政策を利用した「自然実験」により、約28万人のデータを7年間追跡調査した結果です。
ワクチン接種による炎症抑制や免疫系の活性化が、認知症リスク低下のメカニズムとして考えられています。
現在主流の不活化ワクチンであるシングリックスは、研究対象となった生ワクチンよりもさらに効果が高い可能性があります。
アルツハイマー病に対して、より顕著な予防効果が示唆されています。
最近の研究:帯状疱疹ワクチンの認知症リスク低減と心血管イベント減少の関連性(Eric Topol先生のXより)

複数の最新研究で、帯状疱疹ワクチンと認知症リスクの低下が一貫して示されています。
韓国の大規模研究では、認知症リスクの低下に加えて、心血管イベントのリスクも23%減少することが報告されました。
自然実験という信頼性の高い研究デザインが用いられており、ワクチン接種と認知症リスク低下の因果関係を強く示唆しています。
これらの結果は、帯状疱疹ワクチンが高齢者の健康維持に多面的な良い影響を与える可能性を示唆しています。
これらの専門家の意見と最新の臨床研究の結果を踏まえると、帯状疱疹ワクチン接種は、ご自身だけでなく、社会全体にとっても有益な選択肢となる可能性があります。

帯状疱疹ワクチンによる認知症および心血管イベントの予防効果

比較 対象者数(N) 研究の種類 主な発見 引用文献
Zostavax、生年による比較 280,000人 自然実験(英国・ウェールズ)ワクチン接種対象年で比較 認知症が20%減少 Eyting, Nature; 2025年4月
Shingrix vs Zostavaxなど他ワクチン 103,857人 自然実験(米国)ワクチン変更による比較 認知症を発症しない人の割合が17%差 Taquet; Nature Medicine, 2024年7月
Zostavax、生年月日による適格性 101,219人 自然実験(オーストラリア)生年月日で接種対象を分けた 認知症が約30%減少 Pomirchy; JAMA, 2025年4月23日
ZostavaxまたはPneumovax vs 対照群 約20,000人 疑似ランダム化 アルツハイマー病が21%減少 Ukraintseva; Experimental Gerontology, 2024年4月
ZostavaxまたはShingrix接種 vs 対照群 103,615人 4つの研究のメタ解析(症例対照またはコホート) 認知症が16%減少 Shah, Brain and Behavior, 2024年
Zostavax vs 対照(傾向スコアマッチ) 1,271,922人 韓国全国規模のデータベース研究 心血管イベントが23%減少 Lee S, European Heart Journal, 2025年5月6日

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